『裸の島』/新藤兼人

素晴らしい作品だ。
特に目をひいたのは、島に住む夫婦が亡き子供の墓に砂をかけるシーン。
このシーン以前に繰り返し島で育てている植物に水をやる場面が永延あるのだが−ほぼ島に水を運び、植物に水をまく映画だ−その構図と全く同じ様に子供に土を盛る動きも捉えている。これは、明らかに両者の比較のための構図なのだが、生きてゆくために植物に水をやる動作と死んでしまった子供に土を盛る動作、つまり生と死がその第三者において全く同じ動きを取るというのは皮肉なもので、同時に我々はそのサイクルの中でしか生きられず、また抗えない事を意識させられる。この点を強調するかのごとく、子供の死後も夫婦は普段どおり又植物に水をやる。しかし、妻の方は耐えられなくなり、その悲しみと憎しみの結果、大事にしていた植物に水をやる作業を放り出し、狂気的に植物を引っこ抜き始める。この場面で夫の方は暫らく見つめていただけで直ぐに作業を始める。この点においても非常に解りやすく前半部分との対比があり、水をこぼした妻を起こり夫が殴るという動きに対して、後半は何もしない。この夫の動きに対して私は言葉にすればチープさで消えてしまうような感情を感じ、とても素晴らしいと思う。
何にせよ、台詞もなく唯、日々の暮らしを映し出した今作は非常に丁寧という言葉では言い表せない熱意を感じれる作品である。

裸の島 [DVD]

裸の島 [DVD]