[映画]『水の旅人 侍KIDS』/大林典彦

水の旅人-侍KIDS- [DVD]

水の旅人-侍KIDS- [DVD]


先日、レンタル店で偶然見つけ懐かしくて借りてしまった。
懐かしいと言ったのは、確か僕が小学生低学年の時に上映されていた作品で
その後も小さい時に繰り返し何度も見返した作品の中の一つだった。
驚いたことに本編の内容は忘れていたのに、ジャケットを見た瞬間BGMのテーマ曲が唐突に思い出された。
それぐらい素晴らしい曲なのだが、僕の場合こういうことは良くある。
それに監督が大林というの事実も今になって知った。小さい時から好きだったとは。
それに銀幕初出演の伊藤歩、それに「時をかける少女」の原田知世も出演している点も見逃せなかった。



作品を見返してみるにやはり大林はとても丁寧に作る人だ。
その丁寧さが一番表れているのが、逆に荒っぽく撮られているシーン。
細かく言えば、今回は殆どの場面でCGを活用していて、そのためシーンの繋ぎでわかり難くするため荒く撮られた場面がある。例えば慎重17㎝の小人がカラスと戦う場面、また下水を通って少年を助けに行く場面などでインサートされる映像はブレたり、よったりと慌しく撮られいるのだが、それでもコマ送りにして見ると一つ一つ丁寧に撮影され繋ぎあわされていることがわかる。

また、冒頭近くの朝食のシーン。家族全員が喋り通している中で、凄い勢いでカットが変わり捲くり、凄まじい。

それに作品後半、田舎の親戚宅を訪れる場面。滴り落ちる雨、その雨音がいつの間にかテーマ曲のメロディとなり、その流れのまま帰宅した少年が引くピアノの音となる。この演出は憎い。というか僕がやりたかった事だ。



また、今回はDVDで鑑賞したのだが、特典で大林のコメントがついているのが嬉しい。古い作品のDVD化の利点の一つだ。
特にメイキングの場面はとても参考になった。良く知人と大林の作品について話をする際に会話の場面の話になる。何故こんなににも印象に残るのかという話なのだが、これには理由がある。大林の会話のシーンで特徴的なのは、登場人物が歩きながらテンポ良くスムーズに話を進める点である。そして、このスムーズさというのは会話の流れよりもむしろ演習において言える。カメラはドリーやクレーン等で綺麗に移動し、しかもある地点からある地点までの短い距離を大きく動かして短く見せている。さらにその歩く場所に置いても、本来使用されている公道を避け、地元の人しか知らないスペース、つまり道すらない場所に道を作り出すことで、“何処かで見た、けれども何処にもない”という人々の原体験を呼び起こし、軽やかでありながら思い出深い場面に仕上げているのだ。

大林という男は本当に心に乙女を持つ気持ちの悪い素晴らしい監督だ。