就職前線異常なし#5

shinka2006-05-10


朝の九時半に家を出る。
試験は12:30からだったが、知らない場所だったので早めに出ることにした。
場所は新宿一丁目、友人に電話しながらなんとか目的地に着く。
時間は11:00。早めに出ていて良かった。
近くの喫茶店で昼食をとりながら、最後の悪あがき。
今日は私の苦手な英語もでるので高校の時に使用していた参考書を見る。
参考書には細かくマーカーが引かれており、時制や態などの難しい点には別紙で解説までしてある。受験勉強はしてない!と大学の友人には言っていたが、なんだちゃんとやってるじゃん!と自分を恥ずかしくも誉める。けれども実際頭の中にはそんな痕跡は跡形もなく、直ぐに焦りと恐怖の念が襲ってくるのであった。
気付けば、周りには何人かのリクルートスーツを着た若者たちが同じように勉強していた。
ご苦労様・・・と思ったのも束の間、そうか今度のこいつらは同じ企業を狙うライバルなのだと気付く。思えば説明会等で見かける同志とは面識はあっても、お互いを蹴落とす敵としての就活生に出会ったことはなかった。そう気付くとなんだか、自分以外の就活生が途端に頭の良い人に見えてきて劣等感を覚え始める。くっそー負けねー。と思っては見ても落ち着き払ってiPotなんぞ聞いてるやつを見かけると、お前がトイレに行っている間に持参してきた履歴書カバンから盗み取って捨ててしまおうか!等と悪魔がささやく。
時は来たりて、店を出る。
三十分前に会社を訪れたのだが、待合室は既に幾人かを収容しており、そこでも直様試験会場に誘導された。やはり早め、早めの行動が大事らしい。
席は一テーブルに三人を座らせて、全員で約80人といったところ。少ないように思われるかもしれないが、今日だけで三回は開催されているようで本日だけならば240人、これが別日もあるならば700人以上は受けていることになる。
今回の筆記試験はマークテスト方式で最初に名前や大学名を記入させられた。
僕は三人の真ん中にすわっていおり、隣の人の解答用紙を覗き込むと左の異様に短髪な女子が関東の国立校で、右の間抜けそうな男は東京の有名私大だった。ヤビャ。俺なんか来る所間違ってないか?そう思っていると試験開始。落ち着いて問題を解き始める。
半分の30分過ぎたところで、横のやつらの進行具合を見てみると、なんと私より2ページ程進んでいる。二人ともそうということは、私は平均よりもかなり遅れて解答しているということではないか??そういえば、最初の数学の問題でかなりご丁寧にもかなりゆっくりと解いていたかも知れない。バサっと表紙の試験内容を見てみる。全問120問。俺の現状30問・・・大ヤビャイ!!1/4しか終了してない!!そこからはもう隣の奴らとのデットヒート。判らないものは適当に答える先方で追い越せ追い抜けで捲し上げた。
試験終了。結果的には120問ある問題に対して解答できたのが75問程。隣の輩には並べてたが、これならば最初から奴らは大したことのないやつらしかった。
それにしてもSPIはスピードが重要とは聞いていたが、之ほどまでとは。
しかも、一問一問がまた難しいのよ。
正直言って、これは落ちたな。

帰り際、なんやら就活生同士で話し合っている。
そこに関西の輪が合ったので、今回の出来を聞こうと入り込んでみる。
地方と大学名を述べてきたので、こちらも返すと一瞬相手の顔が曇る。
ん?何それ?お前みたいな低レベルの大学が何で受けてるのかよ?ってこと?
はぁ〜??お前だって大したことないじゃん!関東で言えば、千葉大と法政ぐらいの差しかないじゃん!確かにあんたは国立だろうけど、いいじゅん別に!
と激しくい不愉快にはなったが、そこはアハハハと場を流した。

居心地が急に悪くなったので、早々に退陣したが、なんと駅で顔をしかめた長身野郎とバッタリ出くわしてしまった。しかも、挨拶程度に話しかけたら、何かついてきてるし。凄く面倒臭かったから、
俺『椎名林檎って知っとる?』
奴『知ってる!知ってる!』
俺『歌舞伎町の女王って曲の中に「JR新宿駅の東口を出たら〜」ってあるんやけど』
奴『うん。』
俺『それがここね。』
奴『え?あっ、おぉ〜!』
俺『で、あそこが歌舞伎町ね』
奴『あっ、あそこがそうか。俺っちょと言ってきますは〜』
彼の中の椎名林檎がいかほどに大きかったか、わからないが少なくても人生で之ほど彼女に感謝した日はない。