青春狂走曲

『東京タワー』を読み終わるとたまらなく寂しくなった。
家に帰るのは嫌だったから商店街をいつまでもブラブラしていた。
それでも寂しさは引いてくれなかったので久しぶりに大学の方へ赴く。
駅の近くにバーがあって、そこなら少しぐらいは寂しさがまぎれそうだ。
行ってみると普段はあまり客のいないその店も今日は何故か先客が四人もいた。
彼らの談笑と笑い声を聞いていたら余計に寂しくなって
片っ端からメールをする。
いつものように、こういう時にメールは全然返ってこない。

数時間して大学近くに住んでいる先輩と会えた。
先輩といってもとっくに卒業なさっていて今はサッカー雑誌のライター?をしている。
用件は渡したいものがあるという短時間で済みそうな事だったけれども
それでも人と会話できるのは嬉しい事だ。
用件はやっぱり直ぐ済んだけれども、彼との話は続いていた。
話はいつの間にか部活の事になっていた。
ここに書くのは初めてだけれども
僕にとって部活は大学よりも大事なものだった。
授業にではなく撮影と会議のために学校に赴き、
思考は全て部活動と映画に与えた。
しかし、それも終わった。
この前引退したばかりの私には今なにをしていいのかわからない。
それと同時にどうしようもない郷愁を感じている。
何と言えばいいのか、形に出来ない感情。
多分、それは熱心だったOBの人、全てが感じるある種の不安だ。
部活を離れての空虚さと、将来に対する漠然とした不安。
それが交じり合ってなんだか良くわからないものに成っている。
ある人は言った。
「ここよりも楽しい場所を探さなくてはいけない」
彼は言った。
「それは次を見つけるまで一生背負わなくてはいけないもの」だと。

昔の友からの久しぶりの連絡を受け、彼の頭に曲が鳴り響く。
サニーデイ・サービスの『青春狂走曲』

きみに会ったらどんなふうな話をしよう
そんなこと考えると楽しくなるんです

そっちはどうだい うまくやってるかい
こっちはこうさ どうにもならんよ
今んとこは まぁ そんな感じなんだ

やっとその意味を知ることが出来た。
しかし、それは喜びと言うよりは共感と悲しみでしかない。


東京

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