『バーバ吉野 /監督・脚本:荻上直子』

shinka2005-01-19


久しぶりに“良い映画”を見た。邦画というものがどのような定義を持ち、どういうものかはわからないが、少なくても僕の好きな邦画とはこのような作品を言うのだと改めて実感した。桜、川、山、菜の花それらがゆっくりと唯そこに存在するカット、それに呼応する形で人と小さな町が存在し、お話が存在する。とても素敵な作品だ。
この作品はなんと言っても脚本が良い。どこにでもある町の、どこにでもある床屋、どこにでもいる少年達や町の人。唯違うのは“その町の少年は、同じ髪型をしていた”このキャッチコピーも素晴らしい。えぇ!?う〜ん、どうなんやろって感じで静かな興奮を覚える。監督はPFP出身の、今回初監督の荻上という女性なのだが、とにかく少年の描写がうまい。見ているこっちも小学生に戻ってしまうような、そして一緒に小さな悪戯をしてゆく。だから少年たちの心理や行動が手に取るようにわかるのだが、それがとても心地よく“話がよめる”感じで見られる。初監督作品なのにこの安心感は一体なんなんだろうか。
また、バーバ吉野のおばちゃん、通称“吉野のおばちゃん”はもたいまさこが演じていたのだが、それがドンピィシャで、すごく良い。台詞、動き、雰囲気すべてがとてもよい配分で混ざり合って“おばちゃん”というキャラクターを確立させている。
オープニングから今までとは違った意味で度肝を抜かれるし、ラストまで力がはいている。監督自身のモチベーションの上がり下がりはさすがに感じてしまうが、多分スタッフのチームワークが良く、先ほども言ったと落ち古い町のような安心感が作品に満ちている。
とにかくこの作品お勧めです。



■第13回PFFスカラシップ
■2004年ベルリン国際映画祭"キンダー・フィルム・フェス"招待
■2003年東京国際映画祭ニッポン・シネマ・フォーラム"メディア・セレクション"招待