怖い変な服のおじさん

少し前に自転車を無くした。
停めてあった場所に僕の自転車はなく、いつものように撤去か盗まれたのだろうと思って放っておいた。
すると今日、行きがけに駅の近くで僕の自転車を発見した。
急いでいたので確認も持って帰ることもしなかったが、あれは絶対に僕の自転車だ。
帰り際、発見した場所を再び探してみるとやっぱりあった。
最近、ついてるなぁと実感しながら乗って帰ろうとすると
物陰から怖いおじさんが声を掛けてきた。
「ちょっと停まって!あんた名前は?」
物凄くビックリしたが、それでも頭は冷静で色々なことを同時に考えた。
誰だこいつ。俺の自転車を盗んだ奴か。これは俺の自転車だ!いや、待てよ。無くしてから暫らく経つし、もしかしたら既にリサイクルを終えてこの人の私物になっているんじゃ。じゃー何故に名前を聞く。もしから警察?いやいや、俺は何も悪いことはしてないよ。ん、でも2、3日前に警察のお世話になり掛けたことがあったぞ。もしかして、その件についてか。というか警察と考えただけで疾しい気持ちにさせるなんて警察も罪な奴だ。ん〜どうしようか。知らない事とはいえ、未然に降りかかる火の粉は消しておこうか。偽名?・・・ん〜白鳥幸太郎・・・怪しすぎるだろう。なんだ鈴木一郎・・・・普通!ってかイチローじゃん。怪しさ増えてるし・・・・・・・まんどくさ〜。普通に本名を言おう!
と相成って本名を言うと、その怖そうな変な服をきたおじさんは、突然笑顔になった。
このおじさん、やっぱり警察官であったが、実は今日一日中僕の自転車を見張ってそうだ。
前々から移動する不審な自転車だと目をつけ、乗り回されていると判断し今日こそは犯人をとっ捕まえてやろうと考えていたらしい。まさか自分の自転車が人間何日分の仕事を取ってきたなんて、それだけで心苦しいが、警察って本当に仕事していたんだね。話の終わりになると警察官はえらく丁寧に謝ってきた。所持者に何の連絡もしないで何日間も放っておいたことについては警察官の良心がとがめると何度も連呼した。警察官の良心って・・・。まぁ実際僕の自転車は犯人を捕まえる餌に使われたわけだし、気持ちはわかるけど、こうも警察官から謝れると何だか気持ち悪い。