『メメント』/クリストファー・ノーラン

正直、見なければ良かった。
これは作品に対して言っているのではなくて、やろうとしていたことが既にやられていた感覚。

もちろん、テーマから派生した作品という完成品においては、別のものになるとは思うけど、
“記憶と記録の関係性”においては全く一緒だし、そのための手法も同じになるのかも。
・『メメント』においては、記憶(メメント)は曖昧なものとし、記録は唯の道具として無感情に表現されている
・一方自作では、記憶は曖昧なものという考えは前提とし、ならば記録は確かか?と感情的に扱っている。
・しかし、主人公の男の行動理由が彼女がレイプされてという発端も一緒とは・・・
・『メメント』は時間軸を唯純粋に逆行させているだけ
・一方自作は時間軸が滅茶苦茶に入れ替わっている

しかし、サスペンスというのは、ある種のチープさからは逃げ切れないのかもしれないと思う。
話をおもしろくする布石が、とても邪推なものに思えてくるのだ。あるいは悪戯に物語を混乱させているだけのタチの悪い趣味のようにも思えてくる。
例えば、『メメント』の冒頭で何故か主人公の顔には傷がある。また車の窓ガラスも割られてなくなっている。
物語の最初の段階でこの設定はありえない。観客に説明なしで、余計なものが介入することは禁じられ要るからだ。
となれば、この傷には何らかの意味があり、このモノ(傷)の誕生と消失に何らかのドラマが存在することは伏線として明確にわかってしまう。サスペンスはそういった危険性を内包しながら存在している。
けれど、それにしても僕はどうやらサスペンスが好きらしい。それは謎と回答が明確に存在するからだろう。だが最近そういった心から「あっ!」と驚かせてくれる作品には出会ってない。また騙された。映像に逃げるな。逆に話だけを考えすぎて明瞭過ぎる。そんな感想ばかり抱く。僕が好きなのは・・・と考えてみたが作品を挙げられない。もしかしたら、僕は未だ見ぬサスペンスに恋焦がれているのだろうか。

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