『転校生 /大林宣彦』

shinka2006-07-22


嗚呼、映画は記憶だ。
生まれたその時点から既にそれはもう過去であり、過ぎ去りし情景が流れる。
映写機は他ならぬあなた自身に光を注ぎ、その心の中で映写された記録はあなたの記憶と重なり合い、その瞬間に初めて映画は生まれる。
その刹那、なんと素晴らしい冒頭のシーンであろうか。
全てのシーンが輝いて見えるのは、それが他ならぬ“思い出”そのものであるからだ。
そしてあのラストシーン。
思い出は確かに綺麗で素敵なものであるが、同時に思い出すという行為ゆえに何処か物悲しい。
我々は今にここにいて、あの場所には立っていない。
そのような追憶に対する複雑な気持ちを、モノクロの8mmフォルムの中でスキップするカズミは表していたと思う。

小林聡美のなんて可憐でかわいいこと。
この映画をに他ならぬ中学生の僕自身に夏休みの午前中に送りたい。