『デスノート α 』

いやいや中々良かったんではないでしょうか。熱烈な原作ファンを持つ作品の映画はいつも難しいものだが、OPを客観的描くことで双方の導入に成功していると思う。ただ映画におけるテレビ業者が絡むと途端にチープになる点はどうにかならないものか。

またオリジナルキャラクター、オリジナルストーリーのお陰で作品が前編後編合計四時間強という尺にサイズチェンジできただけでなく、やはり未読者と読者の双方に配慮がなされていたと思う。原作と違う点で言えば主人公・夜神月の描き方だ。原作において月は自分を絶対正義と信じる確信犯と描くが、映画では若干人間的な迷いが見える。それを感じるのが月が自分の恋人を自身の策略で殺害するシーン。他の目を気にしてうなだれる演技をする彼の顔をあげたその表情は原作通りであるならば、絶対に「笑顔」でなくてはいけなかった!しかし、映画のそれは少しだけ混乱するただの大学生の表情であった。さらにリュークの「恋人を愛していなかったのか?」という質問に対する月の「さぁね。」という返答からも映画の月もまたオリジナルであることがわかる。

好きなシーンは月が初めてデスノートで人を殺す所。踏切をまたいで相手は心臓麻痺で死亡。ノートの効力に驚きながらも月は踏切を越えて被害者に近づく。物凄いわかりやすい演出。普通ならばおののいてその場から逃げ出すところ、月は果敢にも被験者に向かって歩く。このシーン、月を真っ正面から撮らえており、あっちからこっちに月はやってくる。これは正に今からデスノートという審判を下して彼が(死に)神になろうとする起点を表しており、その点で踏切という安易な境界線を越えさせている。