高円寺での蒲田行進曲

shinka2006-05-12


今日は去年東京という戦地へ向かった先輩Kと飲んだ。
深夜の十二時から朝の六時ぐらいまで高円寺前の大衆居酒屋で飲む。
初め二人で飲んでいると、またしても今年東京という戦地むかった先輩I途中で合流した。
話しの中心は大体K先輩の今後について。K先輩と飲んでいると絶対的にこの話になる。でも彼自身が仕切るんじゃなくて、大概他の人が彼を突っ込んでゆく。多分、皆彼の棘道を心配しているから、それだけK先輩が愛されているということだと思う。で今日もI先輩が鋭くK先輩に対して意識調査みたいなことをする。僕は黙って、時に大笑いしてその光景を眺める。僕はこれだけで楽しいし、幸せだ。


夜も明けて空が白み始める頃、店から追い出されるように出る。二人ともお金があまりないから、半分以上僕が払った。お金なんてある者が出せばいいのだ。店を出て、駅のローターリーを歩いていると、何故かI先輩がおしていた自転車を投げ飛ばした。よっぱど調子がいいのか、二回ぐらい自転車は乗り手のないまま、コンクリートの上を滑る。その様子を見て、なんだか興奮してしまって、近くにあった噴水の中に飛び込む私。朝の噴水の水はとても冷たかったが、酔い覚ましには丁度良い。するとI先輩も入ってくる。豪快に背中から飛び込む姿は綺麗だった。そこへ同じ大衆居酒屋で飲んでいたボンクラのような兄ちゃんたちが、やってきて何故か同じように噴水の中に飛び込む。しかも、その兄ちゃんは眼鏡を落として壊してしまう。半ば嫌な空気が流れたが、次の瞬間その兄ちゃんは「こんな昔の彼女と買った眼鏡なんていらねぇ〜!」と叫び、空遠くに眼鏡を投げ飛ばした。最高だ。東京にもこんなアホがおるとは、未だ未だ捨てたもんじゃない。気分は最高潮。K先輩も促されて噴水の中へ落ちてゆく。


しかし、後になって大変馬鹿な事をしたと嘆く。
ズボンの中には財布と携帯が入っていて、革の財布は水でフニャフニャになり、携帯もディスプレーが鈍く点滅を繰り返している。少しだけ過去の自分を責めたが、おもしろかったし別にいいや。
そのままズブ濡れの三人は、K先輩宅を目指す。あとににはしっかり足型の水溜りが続いている。
K宅でお風呂を借り、下半身を剥き出した状態に新聞紙をかぶせて、そこで眠る。
起きるとI先輩の姿がない。帰ったかと思ったがカバンある。すると下半身を毛布で隠した姿のI先輩が帰ってきた。どうやらこの格好のままコインランドリーに行ったらしい。そんなドラマみたいな事って実際にあるのね。僕はちゃっかりK先輩のズボンを借りて、コインラインドリーに向かう。ついでに溜まっていたKの洗濯物も一緒に持ってゆく優しい私。玄関を出て、外の細長い鉄階段を降りようとした瞬間、雨で階段が濡れていて脚を滑らしてしまった。そのまま最上段から平行にスダダダダン!と転げ落ちる。
ちらっばた洗濯物と、あっちこっちが痛む体、無常に降り続く雨の中、僕の第一声は果たして「銀ちゃん、カッコいい」であった。自分のおもしろくなさに呆れながら、郵便配達のおじさんの心配されながら、僕は洗濯物を広い集めて大人しくコインランドリーに向かう。