『愛と哀しみのボレロ /監督・脚本 クロード・ルルーシュ 』

shinka2006-02-08


愛と哀しみのボレロ

凄い。凄い。凄い。
本当に面白すぎて、目が離せなかった。
間違いなく、僕の映画ランキングのno.3に入る作品である。

目が離せなくなるのは、本当に“完璧”だからである。
洗練されていて無駄が無く、感じた衝動をそのまま取り扱ってくれる。
何をとっても、その演出全てが僕にダイレクトに注ぎ込まれる。
感動と言うよりは見ていて気持ちが良いのだ。
一体、僕は今まで何を見てきたのだろうか、と言うほど目から鱗が落ちた。



モーリス・ベジャールボレロ』 〜バレエという最高芸術に対して
それにしてもバレエというものも凄い。
私は今まで実際にも映像でもバレエというものをちゃんと見たことはなかった。
しかし、この作品でその一部であっても鑑賞できて正直驚いた。
それはとてもエロいのである。
今まで感じたことのない種類の興奮が、唯ゝどのように表現していいのか解らずにエロいのである。前に考えて事だが、人が何かにエロさを感じるのは、その対象がとても躍動的に“生”、つまり生きることを表現しているからではないかと。だから海はとってもエロい。魚の刺身も逆説的にエロい。エロとは生きるということなんじないかと思っていた。そして、この作品のバレエを見て、その考えは確信に変わった。
バレエは凄まじく躍動的で生命感に溢れ、そのこぼれ出した情感に人はえもいえぬ興奮を味わうのだ。身体が、筋肉が、骨が、凄い勢いで語りだしている。そして、その最高の表現方法という絵の具を使って、ボレロという官能的なキャンパスの上に赤い赤い軌跡を残すのだ。性を超越した、中性的な物体が、只管に動き、その“生”をぶつける。素晴らしい。

死ぬまでに一度はベジャールの『ボレロ』を見てみたい。
そして出来ることならば、60歳ぐらいで鑑賞して、凄まじく勃起してみたい。
いや、これは冗談なんかではなく私はそれが一番素晴らしいレスポンスだと思っている。



ボレロ
しかし、困ったことになった。
私がこの作品を見たことには理由がある。
それは次回作ではボレロを扱ったものを予定しており、それで色々と調べていた。
この作品はボレロを使った一番有名な映画作品として参照したのだが、
この映画の構成が、僕が考えていた構成とおおよそ似ていたのだ。
もちろん、四時間にも及ぶ人間模様の細やかな描写と比較すれば、私の構成など凡そ足元にも及ばない代物ではあるが、問題なのは人がどう意識するかということにある。この作品を見たことがある人ならば、次回作を見てもらうと「なんだ、ボレロじゃないか」と思われてしまうかもしれない。実際、そんなことは僕の被害妄想で、誰もそんな事は思わないし、そんな考えはこの作品に失礼なのかもしれない。
むむむ、どうしたものか。