ボナ・ペティ!

shinka2005-11-14

今日は先輩の先輩の繋がりで京都に撮影に行ってきた。
事前の連絡は余りなく

・フランス人監督
・京都で撮影
・映像作品らしい

・三脚がないから持ってきて
という条件だけ聞いたら、眉唾もので「けっ、フランス人は直ぐに京都なんて言いやがる。」と思ったりもしたが、上映会の次の日に知らない人の撮影の手伝いに行くという響きがとても素敵に思えたのでしんどいとは思ったが行くことにした。


集合は夕方四時。京都の蹴上という物凄くファンキーな地名の場所へ赴く。
着いてみると直ぐに空気の違いに気づく。軽くそして刺すような寒さがある。山一つ二つ超えただけでここまで違うのか。
駅から徒歩で南禅寺という寺へ向かう。観光客が沢山いらしゃって、ここで撮影なんて出来るのかしらと少々不安。
約三十分ほどして、スタッフや監督が到着。簡単に挨拶を済ませる。
名はマイデール。この蹴上に住んでいるアーティストらしい。
監督は聞いていた通り、バリバリフランス人でしかも女性だった。会話なんてどうにかなるなんて思っていたが、滅茶苦茶フランス語で話しかけられてしまい咄嗟の英語も出ない。
全く日本教育っていうのはどうなっているんだ。全く話せないじゃないかと他力本願も虚しく、直ぐに自分が悪いのだと気づかせる。この惨めさ、外人に会う度に感じるこの惨めさだけは慣れないものだ。

とりあえず彼女の車から機材を降ろす。
降ろしている最中、住職と思われる人が「許可を取っていますか?」と聞いてきた。この台詞を聞いただけで僕は凍り付いてしまう。前作で何度も聞かされた言葉。けれど今回は僕の撮影じゃない。ここまでやっといて許可取ってないって事はないだろうし、もし取ってなくてもそれはそれで大笑いできるから結局どちらでもいい。
でもマイデールは以外にも住職相手でもフランス語で押し切り、日本語を言ったかと思うと「ワカナーイ」と外人伝家の宝刀を抜きまくる。しかし住職も負けちゃいない「わからないじゃ困るよ」と防戦。
おいおい、マジで許可取ってないのか?マジおもしろいじゃねーか。と僕の笑いはどこへやら彼女は誰かに連絡を取り始め、結局それで住職に許可は下りたと納得してもらうことに成功してしまった。なんだー。

機材のことだが聞いていた程照明はしょぼくなく、また数も十灯と多い。
なんでも、門の入り口から光を煌々と焚き、そこに人を歩かせ光の中に消えてゆくというのを撮りたいらしい。まぁ、好きにすればいい。
撮影中特に記憶に残った事はない。
人、機材が我々の普段の撮影よりも大掛かりなだけで他は何も変わらない。
結構見て盗もうとも思ったが、特筆すべき事は見当たらなかった。
照明等のセッテイングに二時間、撮影ニ時間、午後九時過ぎ位に撮影は終了。
大急ぎで機材を片付ける。準備の時とは違って、勝手がわかっているのですんなりと片付く。


で、片付けていると人が足りないらしく僕は一足先に車で一緒に向かいそこで片づけを手伝った。
他にもいたスタッフのフランス人ばかりに囲まれたらどうしようと思ったが、運良く車で送ってくれたのは通訳をしていた日本人の女性だった。
この撮影、通訳らしく人が四人もいて、一人は京大で仏文専攻の出演もしている男子学生、一人はフランス人にも英語で語りかけるモデル、一人はボランティアで来ていた無職の女性、そしてもう一人は我が大学の教授だが学部が違うのでこれも然程詳しくもない。
彼らの家に着くと、片付けを手伝う。
外人はフレンドリーに大変な仕事を頼むから嫌いだ。おまえがやれよ!と何度も思ったが、言葉がわからないのでしかたなくやる。
その外人はしかも俺に仕事を頼みながらも俺を送ってくれたモデルに抱擁を求める。思わず「whaooo!!」と吐いてしまうが、そんな事お構いなしに合体は続く。俺の身にもなれ。
そうこうしていて気がつくと、僕は家の外に独りきりになっていた。他の外人達はみんな中に入ってしまったらしい。
え?なにこの状態?嫌がらせ?なんで手伝ってまでこんな目に会わなくちゃいけないの。
まぁ、いいや。どうせ中入って気まずい思いするんならば寒くても外にいたほうがよいだろう。
すると今日一緒に来ていた奴から電話がかかってきて「今からそっちに行って、飯をよばれるらしいからそこで待ってて」とのこと。上等だ。



その後は、みんなも到着しちょっとした夕食をご馳走になった。この夕飯が糞まずくてスープもパスタも味がしないの。普段薄味の俺でも塩をかける勢い。味覚か料理のスキルか。一つだけわかっていることは、やはりビールは旨いという事だけだ。(麒麟だけどね)
その間、皆さんは楽しく談笑。俺はフランス語はもとい日本語も達者ではないから、仕方なくビールを飲む。すると酔いがまわり言語も初対面も気にならなくなってきた。
うちの知り合いはみんな話しに夢中。取り残された形となった僕は横にいた今日通訳として来ていた26歳の女性をいじることにした。この人がとてもよい人で、僕の話はもちろんのこと、フランス人との通訳までして頂いた。メルシー!だから大体この人と話をしていて、この人も掘れば掘るほど色々な話をしてくれるので楽しかった。

お酒がなくなり、買出しに行くことに。当然僕らの中では一番年少である僕が行く。というのは建前で結構前から飽きていたので良い気分展開になると思ったからだ。
車の中では相変わらず通訳の人と話していたが、同時に監督のマイデールさんもいたので、これはチャンス!!と思い通訳を解して色々と質問をしてみた。

「何故、あなたは映像を撮るのですか?」
「私は常にカオス(混沌)の中にいます。けれどもフィルム(てめぇ、DVで撮影してたじゃなーか!)は物事の本質を映し出し私に見せてくれる。」
「物事の本質というのは世界の成り立ちのような物ですか?」
「本質は本質です。ナントカカントカ・・・・」

だそうだ。なるほどね・・・大変ね。

二時ぐらいお世話になった通訳さんが帰った。この前から監督は室内を右往左往していて何をしているのかと思ったが、どうやら撮影したマスターテープをなくして探してるらしく、帰る通訳さんに訳言って寺まで乗せてもらって探しに行った。やれやれ。
隣には最初にここまで僕を送ってくれたモデルが居て、エレベータの中で
「みんな(外人達)は君がさっきの通訳と何か間違いが起きてくれる事を期待してたんだけど、どうやらそうでもないみたいね」と言ってきた。
おいおい、外人はどうやら高校生みたいな遊びがお好みらしい。
僕は彼女とだけ話していたわけじゃない、むしろ彼女としか話せなかったのだ。

ロビーに戻ると、先輩の先輩の話で場は大盛り上がりしていた。
この先輩、職業が探偵で、もうその肩書きだけでおもろいのだが、本人も何と言うか“天才”で言うこと言うこと爆弾発言におもしろい。
特に『探偵VS探偵』の話は、そのタイトルだけで素敵です。

そんな感じで五時までいた。
途中寝ようと思ったのに、隣に座っていたモデルが探偵さんの話にオーバーリアクションしたり、写真見せてきたり、うっとしく寝れなかった。

始発で帰る。
二日連続のオール。もう若さだけでカバーしきれないよ。