「ちょっと遠く、コンビニエンスストアー」

shinka2005-06-22

近所のコンビニが潰れた。一瞬、そう思った。
家を出て、十メートル歩くと大通りに出る。そこから左を見れば、二十メートル先には緑色に発光した看板が見え、その下には煌々と照明が照るコンビニがあるはずだった。
しかし、今日は不思議にもその光は見えず、ただほの暗い闇がそこにポツンと存在するだけだった。
本当に潰れたのか。以前からそのこのコンビニを利用していたので、細かい変化に気付く。そう言えば、少し前から棚に置かれる商品の数が少なくなっていた。始めは文房具や日用雑貨などのあまりダメージがないものが、そしてこの前などは飲み物の棚が丸ごと一つドカンとなくなっていた。この光景には見覚えがある。実家の少し離れたコンビニ。照明は不自然な程、黄色くそして何故か暗い。店員は私服で勤務し、客も車で海に行くヤンキーがほとんどだ。良くある田舎の悪い例のコンビニ。その店が潰れる前、こんな感じになっていたことを僕は覚えている。まさか、この店も。絶対考えられない。この店はそれこそ、バイトの兄ちゃんの髪型はともかくとし、ちゃんと店員も店内も清掃されていたし、何よりも立地条件が良く、マンションの一階、大通りの十字路、大型アミューズメントパークのまん前、バス停の前・・・・と利用客は黙っていても来るような所である。経営状況が悪化したとは考えられず、潰れるとは考えにくいし、何もよりも潰れてもらっては困るのだ。
そんな事を考えながらその光が灯っていないコンビニに近付く。明かりのないコンビニは、とても不思議に思えた。普段、当たり前としている光景が、変わった時、当たり前ではなかったのだと気付き、当たり前だと思い込んだ当たり前じゃない事象を殊更当たり前だと慰める自分が居る。
店舗に近付くと、“リニューアルオープンのために一時閉店のお知らせ”と題打った張り紙が成されていた。良かった。君が居ないと僕はとても困るのでね。という訳で、ここからは少しだけ遠いコンビニを利用することにした。歩いてみれば然程、遠くはないのだがやはりそれよりも近くにコンビニがあると、それ以上歩くのはおっくうに思ってしまう。
なるほど、慣れというものは怖いものだ。
しかし、不思議だ。コンビニはコンビニエンスではなくともコンビニで、すぐそこになくてもコンビニであるのだ。我々は少し固定観念というもに捉われすぎているなというアホな考察をしながら歩く。
気がつくと、空からは少しばかりの雨が降っていた。半ば無意識的に『雨に歌えば』を口ずさむ。どうして雨の中、歩く時はこの曲が思いつくのだろう。雨の歌のわりに軽快で明るく、だけれども少し物悲しいこの曲を僕は、雨が降る日はいつも口ずさむ。でも、僕は映画『雨に歌えば』を一度としてちゃんと見たことはない。だからこの場合は、どちらかと言うと『時計仕掛けのオレンジ』であり、雨の中歩きながら僕は真っ赤なヘンテコリンな服を着た女をレイプし、丸々に太ったその旦那を蹴りまくるのである。アイム、スィ〜ギンザレイン♪フンフン〜インザレイン♪
気がつくと、そこはコンビニで、出てきた客が、何もない空間を蹴っている僕に対して、明らかに疑問を持った眼差しを向けていた。ドンウォーリー。
買い物を済ませ、店を出る。買ったばかりのタバコに火をつけよと思うのだが、中々火がつかない。僕はタバコに火を付ける事を諦め、店内にライターを買いに入った。すると先程レジをした男が近付いてきて「ライター?」と尋ねてきた、僕は少し恥ずかしそうに「えぇ」と言うと男は、レジに戻り無言でライターを差し出してきた。一瞬、何のことだかわからなかったが、すぐさま財布を取り出そうとすると「いいよ」とそのライターを手渡してきたのだ。私は余計、分からなくなってしまって「ありがとう」と言うと、そそくさと店を後にした。
コンビニで人を感じたのは初めてである。月並みな言葉であるが、コンビにはマニュアル化されたサービスと徹底的なリサーチを勝ち抜いてきた商品と気持ち悪いぐらいの照明しかないと思っていた。そのコンビニで初めて人の存在、人情というものを感じたのだ。たかがライター一つであるが、相当嬉しかった。買えば何でも済むということも改めて考えさせられた。
コンビニという存在、買うという交換行為、それをライター一つで考えさせられた。
全く、度々で申し訳ないが、慣れというのは怖いものである。

※今日から文章の誤字脱字に気を付けようと思う。この所私の誤字脱字度は益々悪化し、少々気恥ずかしい域まで達した。以前までは「そんなものは重要じゃない、大事なのは伝えようとする気持ちだ!」などと逆切れしていたが、やはり文章・言語という存在を考えるにそれは唯の記号であり、その目的は他人に事象を伝えることが第一である。従って、文章の間違いはその存在自体を根底から犯すものであり、やはりそれは許されざる行為だと思う。
ですから、皆様、これから僕の書くブログに誤字・脱字がある場合にはお知らせください。
又、何故そのようなことが起こるのか理論が御ありでしたお知らせ頂くと有難いです。