『さよなら、さよならハリウッド /ウッディ・アレン』

shinka2005-06-03

最終日。最終上映。いつも、こうだ。見たい映画はいつの間にかに終わっていて、見たとしても実は最終日だったりする。全く、都心部の上映スケジュールはどうなっているんだ。正直、もう城が動いたって動かなくたってどうでもいいだろ?あいつは動きっぱなしだったじょないか!?
さて、今日は三宮のシネ・リーブル神戸まで行ってきました。前から薦められていた今作は大阪では既に上映終了していて京都か神戸でしかやっていなかったためだ。この劇場初めて来たのだが、凄いとこだね。昨今の宇宙ステーションみたいな劇場ではなく、豪華!優雅!ブラボー!ってな具合の内装で“そうか、映画を見るという行為はちょっとゴージャスでステキなイベントだったのか”と再認識してしまいた。


さて、映画のほうですがもう滅茶苦茶おもしろい!ウッディ・アレンの作品は「ギター引きの恋」しか見たことが無く、それで少々食わず嫌いになっていて今作もどうなることやらと半信半疑でしたが、終わってみれば満足・満足。ず〜と笑いっぱなしです。
前半、主人公のヴァル(ウッディ・アレン)が元妻のエリーと喫茶店でビジネスの話をするのだが、突然彼女の浮気について怒り出して!と思ったらビジネスの話に戻して・・・と思ったら怒って・・・というシーンがある。このシーン、物凄いのだ!ウッディのその滅茶苦茶な演技もさることながら、このシーン六分程のワンカットなのである。しかし、それに気付くのはもう次のシーンになって始めて気付く。ココまで長廻しで画面をもたせ、さらに話に夢中にさせ、虜する力、これがウッディ・アレンなのだろうか!?この映画はそうしたワンカットで済ませる場面がほとんであるにも関わらず、アメリカのTV{ドラマのようなチープさも、実験映画的なドキュメンタリー性も全くない。全て計算されつくし、とても美しく役者や台詞は配置されている。私はこんなにも丁寧で優しい作品を見たことは無い。物語は物凄く単純なのに、それでもグイグイと引き込まれてゆくのは、豊富で笑みのこぼれる台詞回しと演技、短距離しか動かないのに必ず被写体を追っているカメラワーク、そうして念入りなリハーサルであろう。それが、この作品を構成している要素である。特にカット割で眼を引くのはオープニングである。エヴァの起用についてギャラクシー社の上層部がもめるシーン。もちろんこのシーンも長廻しなのだが、驚くことに八人程の役者がいるにも関わらず、全てを一つの構図に収めさらに、狭くも鬱陶しくもない。冒頭が既に凄い!と思ってしまった。まぁ正直な話こんな細かい事を上映中に思わせなほど、この映画は素晴らしいし、それだけに僕は真正面から没頭していた。


思うのだが、この作品を面白くないというヤツは映画を見る資格なんて無いと思う。ラストが悪いだとか、メッセージ性が薄いだとか思っている奴は映画に付加価値を与えすぎて、本来の映画そのものにないものまで望んだ結果そう考えると思うからである。この作品はこれ以上に何も要らないのである。これでいいのだ!それはラストで結局、破茶滅茶な作品に完成してしまった映画がフランスでは大絶賛を得るという内容からも伺える。フランス映画への愚弄とまではいかないが、すくなくても上記のようなメッセージではないかなと個人的には解釈している。