『THE BUTTERFLY EFFECT  バタフライ・エフェクト 監督・脚本/エリック・ブレス J・マッキー・グルーバー』

shinka2005-05-17


バイト終わりになんとなく映画を見る。劇場のその場で選択したこの作品。
個人的には滅茶苦茶おもしろかった。
久しぶりに脳裏に残る映画として帰りの電車の中でも何度も反芻し、はぁとため息をついてました。この作品の魅力は一重に脚本の素晴らしさにある。複雑な構成である本作にはきっと何百回という書き直しと話し合いがなされていると思うし、また脚本と監督を兼任することによって撮影においても監督がシーンや構成など全部を諳んじているような安心な感覚が伝わってきた。そのような安定感のある構成とは裏腹に映画はスピーディーかつデンジャラスに進んでゆく。一瞬も眼を離せない。

この映画は簡単に言ってしまえば、主人公が過去(あるいはパラレルワールド)に戻り、人生を変えてしまうというSFなのだが、その過去に戻る方法が昔つけた日記を読み返したり映像を見たりするという聞くとあまりおもしそうな内容ではないのだが、これが映像としてみると滅茶苦茶おもしろくて、こればっかりは実際に見てもらわないと伝わらないと思う。
又劇中主人公は何度も人生を変える。しかし、その度に自分が予期しないことが作用して前よりももっと悲惨な結末に到ってしまうという内容も人の業を表現しているようで納得する。バタフライ・エフェクト−蝶の羽ばたきが中級の裏側で竜巻を引き起こすことだったるというカオス理論今の自分以外の自分は存在しない。しかし、この監督が描くその悲惨な結果というのが本当に悲惨で、ある意味笑ってしまう程酷いものなのである。そういった意味からもこの作品は“大人のための童話”という気もする。ある程度生きてきた人なら誰嶋が思う“あの時こうしていれば”という願いを叶え、同時に幻滅させる。

ラスト主人公がもう過去には戻らないと決心し、写真やらフィルムやらを焼くシーンがある。一緒にいた友人が主人公に尋ねる。「本当にこれでいいのか?」すると主人公が言うのだ。「自分が自分だと確認する必要はないだろう」これには痺れた。最高の台詞だと思った。エンドロール中も鳥肌が立ちっぱなし。この言葉だけでえこの映画の全てを言っている。

ただ、ラストが少しドラマ終わりになってしまったかなとも思えるが、あの時点でもう一回ひっくり返すことは必要ではないように思えるので、やはりあの安易な終わり方で良かったと思う。