『春の雪/行定勲』

shinka2005-11-21

行定が目指す場所はわかる。『世界の〜』から『北の零年』、いやもっと言えば『GO』のころからその野望は始まっていたのかもしれない。
あやつは映画界に置いて断固とした地位を確立しようとしているのだ。
彼は映画界の中で既になくてはならない存在になっているし、あの世代で言えばNo.1に監督依頼の際に名前が挙がるであろう人物にまで上り詰めた。
それが『世界の〜』でピークを迎え、自分自身でも確信していた。
そして今度はそれを不動のものにしようとし、『北の零年』という歴史物や、『春の雪』という文学にまで手を伸ばした。
しかし、どうであれ彼は急ぎすぎている。
今作を見て、思ったのはやはり未だ未だであるなという感想であったからだ。

今作、もしこれが自主映画であれば「良く頑張りました」とその労力についてだけ誉めることしか出来ない。
例えばこの作品に対して「画がきれい」という感想をしてた人がいるが、そんなことはない。あのようなものを綺麗という表現では言わない。もっと人物を綺麗に映し出すことは出来ていただろうし、セックスも長く回数も多く、愛し合うというよりは淫乱・・・というよりは破廉恥に見えてしまった。もっと一回だけで綺麗にそして熱く(厚く)表現できてただろう。
また馬車の中でのキスシーンも、あれがどれだけ重要なシーンだとわかっているのならばバックをCGなんかで表現してはいけない。

構図・内容とも文学をそのまま起こした、捻りもない優等生の撮り方。というかドラマの取り方。

最近寝てないということもあったが、途中30分寝てしまった。
明らかに予算、労働力の欠如が目に見える。
だから早すぎたという感想を持つし、成立させようと躍起になっている姿も想像できる。
期待してただけに残念。

竹内裕子とその女中だけが素晴らしかった。
やっぱり妻夫木くんは彼のままだった。